あれはいつだったか?5月とすると3ヶ月くらい前になるだろうか。
我が家にはいなかったゴキブリが主人の実家からやって来たのは。
寒い所にはゴキブリはいないんだって、主人は言う。そうに違いは無かった。ここに来て3年半、確かにゴキブリを見た事は1度も無かった。
ところがある日、実家から届く食材に紛れ、2センチ程の君が現れた。実際には存在するらしい事を主人から聞いていた。ある朝、黒い物がサササッと、冷蔵庫の下に入って行ったと、聞いた。大きい君だったそう。記憶に残らないようにしていたのに、ついに出会ってしまった。
今、街で話題の映画監督で路上詩人の「てんつくマン」がついに愛読書「致知」に載ったと主人が言うので、どうしてもそこだけ読みたいと、行った台所、午後10:45。
座布団の端に隠れようとしている君。
だが隠れられず固まる君。
「あ~どうしようどうしよう...あ~え、え~っと、紙紙」近くにあった永谷商事から来ていた寄席の空き情報案内のチラシを手に取ってしまった。ごめんなさい大矢さん(広小路亭などの支配人)と思いながら、一思いにえいっと捕まえる。
ところが捕まえられず座布団の中に、「ん~どうしよう。踏んでつぶれるのも嫌だし。あ~でも、座布団カバーを洗えばいいか。いや、でも嫌だ。多分臭いだろうし。やっぱり、紙だ紙」座布団をめくる、と、同時に紙から黒い君がポロリ!ええっ!紙の中にいたの?捕まえてたの?「知らなかった。残念無念」
気を取り直すのも勇気がいるよ。
またまたサササッと逃げるでしょ~逃げるよね~引き出しの下。は~。
除けたけど、また逃げるよね~。
は~。
は~。は~。
だけど、君は捕まってしまった。
こんな虫嫌いな私に。
私は殺生はいたさん。この寒い土地で、生きられるものなら生きてみよ。
この真夏でさえ、窓を閉めて寝るこの寒いところで。
ぽ~んと、君を外へと放り出した。