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釈台

b0008478_045174.jpg 「芸人はどんなところでも着替えが出来なければならない」と、先輩から教わった。講談界に入りたての頃、洋服から着物へ着替える前座の部屋などは無く、トイレの前の片隅で、着物を肩にかけ人に背を向け、見えないように着替える神業を当時のふづき姉、今の茜お姉さんから学んだ。なかなか思うようには行かず、歯がゆい記憶が今でもよみがえる。この「トイレの前の片隅」は着替え部屋でもあり、食事を頂く場所でもあった。この厳しい修業があってこその今なのだなぁ。
 今日は、岐阜市にあるウェルサンピア岐阜で講談をして来た。着替える楽屋もなければお茶も出ない。特に用意してくれと頼んでいないのだから仕方がない。着物に着替えるのは、本当は、すぐそこにある主人の実家ですればいいのだが、乳飲み子を連れての仕事だから、ギリギリまで娘のそばにいたい気持ちからした事で、これまた仕方がない。
 ここには、着物を着替えるような更衣室は無く、スポーツを楽しむ人たちの更衣室しかなかった。調度、テニスを楽しんだマダムたちと一緒になってしまった。「結婚式?」「今日は日がいいのかな?」「これは袷?」などとたくさんの質問が飛んで来た。無理もない。こんな所でせっせと着替えている人などは滅多にお目にかかれないだろう。
 何年か前だったら、楽屋も無い様な所には怒りを表して攻撃的になったかもしれないが、すっかり丸くなってしまった。そう言えば、前に、演歌歌手のバックバンドが全員入れる位の大きな楽屋を用意されたが、1滴のお茶も出てこないどころか、私がのどを潤す為に持って行ったペットボトルの水を見て、主催の人が「これ調度いいね、貸して」と言って持って行ってしまった時は驚いた。私の後に出る演歌歌手のスモークの為だと後で判った。流石にこの時は怒って、その人には、いつも出すお礼状は出さなかった。
 まぁ、しかし、事が済めばいつも思う。ギャラが安い時も、お茶が出てこない時も、「まだまだ私は足りないんだ」と。「これは戒めなのだ」と。
  そうそう、そんな事ではなく、今日は本邦初公開!新しい釈台のお披露目だ。今日のお客様、銘木屋の社長さんから頂いた桐で作った釈台だ。そして、木工家吉田清さんの作だ。
 初めて張扇で叩いた釈台の音はすがすがしかった。
by hinihiniaji | 2006-10-03 22:41 | 講談


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