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東京大空襲の日

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 「泰」天下泰平を願って。東京大空襲で亡くなった方々への追悼。
 
 1千万人が一夜で亡くなった横川国民学校。書家井上有一は小学校の先生をしていて、3月9日宿直だった。横川国民学校に居た者の中でたった一人生き残った。いや、生き残ったのではなく、一辺死んだのだ。7時間もの間息がなく、人工呼吸の結果の奇跡的生還だった。教え子、同僚、友人、教え子の家族、見知った者たちがわずかな時間で大勢死んだ。3月10日は東京大空襲の日。
 この9日から11日にかけて、浅草のすみだリバーサイドホールにて、井上有一展が催されている。この地、この近代的なビルの建つこの地の下で、一体どれ位の方々が無念の死をとげたのだろう。足早に通り過ぎる吾妻橋、隅田川の流れ、アサヒビールのビル、燃え立つ炎、穏やかに犬の散歩をするご夫婦、夕暮れの落ち着いた空気の中を、すみだリバーサイドホールへと向かった。3月10日18:30から始まる海上雅臣先生の講演を聴きたい為に。
 この日にこの地でとこだわり続ける海上雅臣先生は、井上有一を世に出すべく活動をされている美術評論家の先生だ。墨田区に掛け合っても、横川小学校に行っても、みな無関心なのだろう。公の後援が頂けず、一日20何万という会場費を払い、3日間催すのが精一杯。それでも、日本橋のかみ屋さんや、いくつかの後援により成り立っている。この会場が入場料を取れない為、毎回入場料無料だ。だがこの場所で開催することに意味があると、海上雅臣先生は頑張っている。海上先生との出会いにより、私の新作講談「噫横川国民学校」は出来上がった。1年前の3月10日に初演が叶い、今年もまたこの時期に日にちはずれたが、再演が叶う。場所は上野黒門町本牧亭。しかも、トリだ。いわゆる主任。これも調度良くこの時期にトリの依頼を受け、又々奇縁を感じている。何しろ、井上有一の取っ掛かりが命日でやっていいんだよと言わんばかりに昨年の私の誕生日に2回目と、なんだか不思議と数字がぴたっとはまる。だから今年、寄席でやろうと会場探しをしたが、生憎みな埋まっていて3月10日に会場を押さえられなかった。だけど、流れるものに身を任せていたら、本牧亭のトリが回って来たのだ。これで良しとなんだか納得!
 人は体験した事でないと語れない。言葉なんか何の役にもたたないだろう。それでも私は、やっていいよと、井上有一から言われているのを感じ、13日に3度目の井上有一と東京大空襲の話、題して「噫横川国民学校」をやらせて頂きます。人は忘れっぽいもので、戦争の事、東京大空襲の事、毎年毎年やり続けないと、だんだんと薄らいでしまう。かわいい子供たちへ、未来の子供たちへ、伝えて行かなければと、微力だけれど、講談師神田昌味が使命を感じているのです。
 時間の許す方は、是非浅草、アサヒビールのビルの奥にあるすみだリバーサイドホールへ行って、有一が書きたかった書を、書き残したかった書をご覧になって下さい。
 講演会の収穫として...有一作品はこんなんでは駄目だと消してまた隣に書く、消して消してまた書く。一見、ただの下書きか?と思うかもしれない。しかし、その消している事に価値が有り、より良い作品、より力、迫力、パワーのある作品へと仕上がっている...との海上先生の言葉に大いに納得した。有一の書は、たくさん消してある物程高価、という訳だ。
 視覚から飛び込んで来る井上有一の書を是非ご覧になって、昌味の講談を聞いて下さい。本牧亭にご来場叶わない方は、CDで聞く、という手もありますよット!
by hinihiniaji | 2010-03-11 06:44 | 講談


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