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「い」強調

 4月20日(木)
 日本橋亭での講談会の帰りに良く行った...と言うよりは、良く連れて行って貰ったのが砂場と言う蕎麦屋さん。神田には二つの老舗の蕎麦屋さんがあって、「藪そば」派「砂場」派に分かれるという。私はどちらかと言うと、やはり行き慣れたという理由で砂場派かもしれない。でも、藪そばの雰囲気もなかなか江戸前っぽくて好き。
 田舎で育ち、子供の頃は自宅で蕎麦を打っていたので、外食の蕎麦には縁が無かった。子供の頃は黒くて細い蕎麦を好きにはなれなかった。うどんの方が好きだった。しかも、19歳の時、上野広小路の本牧亭の最後の日、江戸前の蕎麦の食べ方を知らなくて先輩に叱られ、泣きながら蕎麦を食べた苦い経験がある。もり蕎麦をたっぷりのつゆに付けてもぐもぐと食べたのである。まさか噛まずにずるずるっと飲み込むなんてそんな動物みたいな事がまかり通っているとは知らなかった。「良く噛んで食べる事」と、教わった私。それが蕎麦には通用しないと知った19の正月。
 江戸っ子ぽく生きようと努力はしたけれど、蕎麦だけは努力をしない事にした。つゆはたっぷりがおいしいし、良く噛んで食べないと胃が痛くなる。だから蕎麦を食べる時はたいてい私はびりっけつだ。それでいいと開き直った。
 江戸前の蕎麦の衝撃的事実はたくさんある。量が少ないという事やつゆが濃いという事も驚きだけど、それよりも、砂場の「いらっしゃい」に驚いた。普通「いらっしゃーい」と「しゃ」の後を伸ばすと思うのだが、「いらっしゃいー」と、「い」の後を伸ばし、とても長く「いー」と言っている。「い」の存在は消えてしまいそうな発音なのに、とても強調されている。けっこうこの言葉が耳に残る。
 でも、例えば寄席のお客さんに「いらっしゃいー」とは間違っても言えない。言ってみたいと思うけどなかなか口に出せない言葉だ。
 「い」を強調するのは嫌味な感じに聞こえる気がするけれど、この「いらっしゃいー」はさらりと「い」を伸ばす挨拶なので問題なし。
 
「い」強調_b0008478_2344263.jpg
近頃2歳の息子は「い」強調で話をする。
 ばいば~い→ばいばい~
 グンナ~イ→グンナイ~
 いらなぃ→いらない~
 いってらっしゃぃ→いってらっしゃい~
by hinihiniaji | 2006-04-20 23:44 | 講談


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